南埼玉どうぶつ病院


● 第十二回 ●
「麻酔が怖い理由」
麻酔が怖い
老齢だから
という話をよく聞きますが、
麻酔管理が出来ないのと
麻酔が怖いのは話が違います。

適当に長時間麻酔をかければ、
死んでしまうのは当たり前です。

麻酔は怖い、それは当たり前の話ですが、
適当に麻酔をかけている
危ない動物病院の「怖い」と
きちんと麻酔をかける麻酔に真剣な動物病院の「怖い」は全然違います。
麻酔はもちろん怖いですが、それは若くても同じです。

麻酔が怖い理由を簡単に書いてみようと思います。
開業してから隔月で連載してきました。
今回が最終回ですが、次回から随時症例紹介ができればと思います。


ねーねー、姫ちゃんー

麻酔って怖いって思うんだけれども
麻酔かけられたら意識が無くなるから
何されるかわからないのですよねー

一般世間では、
麻酔かけられてから
何をされるかわからないというより 

麻酔で死んじゃうと思われているから
怖いって言われているのよ。

そうなんですねー?

私はてっきり
麻酔かけられてる間に
鼻水でも吸われてしまうのではないかなと
思いましたよー

アホなこと言うんじゃないわよ!

麻酔って死んでしまうのですか?

それは怖いですね
ヒトと同じように
麻酔をかけると死んでしまうことってあるのよ

でも、きちんと麻酔をかけていれば、
実際死ぬ確率は非常に低いわよ。
きちんとした麻酔・・・

それよりも、
麻酔をかけて死んでしまう理由って
なんですかねー?
麻酔をかけて死んでしまう理由としては
主に
・ 循環障害
による
・ 末梢組織の酸素不足
なのよ。
いやー

むずかしい言葉なんですねー 
頭の悪い銀次さん
麻酔のせいで、
血の巡りが悪くなって
体中の酸素が足らなくなって死んでしまうってことよ。 
いやー
最初からそう言って欲しいですねー

フンフンッ! 

汚いわね!

結局このコーナーでは
最後まで私に鼻水をかけてばかりじゃない!

フッフ〜〜ン♪

スミマセンですねー
とにかくね、
麻酔を安全にするためには
血の巡りを良くしなければいけないのよ
そして酸素を十分に全身に
いきわたらせなければいけないの。
どこの動物病院でも、
麻酔をかけるときは酸素とガス麻酔を使って
麻酔してるんですよねー?

安全な麻酔ってどうしたら
良いんですかねー?
安全な麻酔のためには、
先ほどの血液の巡りをよくしなければならないのよ

そして十分に酸素をかがせること。
そのために、
麻酔モニターっていうものがあるのよ。

心電図や血圧、呼吸数、血液中の酸素飽和濃度、呼気二酸化炭素分圧、麻酔濃度、体温、心拍数、呼吸回数
挙げていったらキリがないわね。
それを全部チェックするのですねー?
そうなのよ。

それに加えて、
実際に動物をみて、
舌の色や内股の脈圧、尿量、そして呼吸時の肺の圧力
なんかも見ているわね。
見ることがいっぱいあって、

大変なんですねー

私にはとても出来ないですねー 
これは、
麻酔管理をきちんと勉強して、
麻酔管理をこなして、
実践して学んでこないと出来ない事よ。
勉強は遠慮したいですねー
銀次さんはおバカですからねっ。

なにしろ、
異常があったら、早めに対処しなければならないもの。

薬を握り締めながら麻酔管理は必須ね!
おバカほど可愛いってもんですねー

ところで麻酔の前に、
よく術前検査をすると思うんですが

あれは何のためにやっているんですかねー?
人間だったら、
麻酔の前にいっぱい検査をすると思うけれど、
動物の場合は
血液検査だけをやっていることが多いわ。

でもね、安全に麻酔をかけたいならば、
尿検査や心電図、超音波検査なども併用しなきゃだめね。
血液検査って
必要なんですかねー?

刺されるの痛いですねー
はっきり言って、
血液検査等でひっかかることは稀よ。

でも、人間だったら
術前検査無しで手術をすることって
まずありえないわよね。
それと同じことよ。
たまに、
麻酔をかけるのに血液検査をしない
動物病院があるけれども、

これは大丈夫なんですかねー?
さっき言ったように検査しなくても大概大丈夫なだけよ。
麻酔の管理やモニターがきちんとできない
病院かもしれないわね。
自分に置き換えれば、
検査なしで麻酔をかけるなんて考えられないわ。
ちなみに血液検査していれば助かった麻酔の場合
訴えられるのは獣医さんのほうよ。
やっぱりお年寄りのほうが
麻酔は怖いものになるんですかねー?
きちんと術前検査をして、
それこそ血液検査だけじゃなくて、
色々と検査しなきゃだめよ。

その結果を把握した上で麻酔薬を選択して、
なるべく体に負担がかからないように
する必要があるわ。
老齢の麻酔が怖いというのは確かに正しいわ
内臓の機能や心臓なども弱ってきているからね。
だからこそ、きちんと麻酔前検査をして
麻酔管理をしてあげなければならないの。
ちなみに南埼玉どうぶつ病院では、
他院で断れた15歳とか16歳の老齢動物でも、大掛かりな手術で麻酔をかけることは結構あるのよ。
今のところ老齢の手術は全部成功させてるわよ。
あの注射してくる院長って
私の鼻水をかけられる役だけじゃなかったんですねー
まったく、最後まで恩知らずね!
それでも把握しきれないのが、
麻酔薬との相性や検査でわからない体質の問題なのよ。

だから、若くても、歳をとっていても、
そういう把握仕切れて居ない部分での
麻酔リスクはあるわよ。
つまり、若くても老齢でも

きちんと麻酔の管理をしてあげればほとんど大丈夫って
事なんですねー?
そして、把握できない麻酔のリスクは
若くても老齢でも変わらないという事なんですねー!
通常は麻酔薬の影響で変化する部分を
薬で補ってあげればいいのだけれども
麻酔薬をかけてからすぐ亡くなってしまうタイプの子は
薬でも救うことが できない場合が多いわ

だって、麻酔をかけて数分〜十数分で亡くなってしまうもの。
今日もお勉強になったんですねー

さて、おやつでも食べますかねーー
今日もこうやって健康体でいられて
おいしいおやつを食べられるのも
病気が無いおかげね

やっぱり健康管理って大事ね
姫ちゃん

説得力のある体型になって欲しいものですねー

と、言うわけで
今日のオヤツはもらってあげるんですねー
さよならーーー
待ちなさーい!!

私のオヤツを奪うなー!!

キーー!

食べ物の恨みは怖いのよーー!!!!

参考図書:動物看護士のための麻酔超入門 著:佐野忠士 先生
(アフィリエイトでは決してありません)

※ ちなみに当院で麻酔をかけるときは、
私がオペしながら怒号の指示を出すので、動物看護士さんが大忙しです。
麻酔モニタも凝視してもらってます。


連載終了でございます
2年間長いようで短かったです。
開業してあっという間に2年が過ぎました。
飼い主さんもサワリだけでも知識を入れていただき、
飼い主さんとあーだーこーだー言い合えるような診療を
できればと思います。