がん診療を志すきっかけ~叔母の死と愛犬の死~

 がん診療を目指すきっかけになる事件が大学生になってからありました。
 まずは叔母の癌の罹患です。
 大学2年生の頃、叔母が癌になりました。
 突然腹痛がはじまり、病院に運び込まれたそうです。
 その後、長い入院生活を経て通院療養になりました。
 長い間入院していたため、てっきり亡くなってしまったものと思っていましたが
 叔母は退院し、その後通院での治療を行うことになりました。
 末期の大腸がんでした。
 既に様々なところに転移が起きていて、治療は困難でした。
 叔母が亡くなるまでその治療は1年にわたりましたが、
 叔母はとても厳しい方でしたが、段々と体が弱ってゆくにつれて気弱になりました。
 弱々しくなった叔母は人が変わったようにとても優しくなりました。
 今までは叔母がどちらかといえば、苦手な方でしたが
 叔母は「いままでごめんね」と言いながら
 そして周りの人に「ありがとう」と感謝をしながら末期治療を行っていました。
 しかし末期治療も終盤になってくると痛みとの闘いになりました
 叔母はよく泣きながら言いました。
 「なんで私がこんな目に・・・」
 叔母をこんなに苦しめた癌が憎くなりました。
 
 実は叔母が癌で入院したのと同じ時期に愛犬が死にました。
 突然下痢が始まり、急に倒れたそうです。
 手術の甲斐なく死んでしまいました。
 子宮癌とのことでした。
 愛犬を自宅に連れて帰ると、その死んだ愛犬の子供が匂いを感じて探していました。
 子供が探す姿をみて、
 その時、初めて涙を流しました。
 そこで私は改めて思いました。癌が憎い。
 
 実は、今思い出すとどう考えてもただの子宮蓄膿症でしたが
 (手術で取った子宮を見せてもらった時にボコボコに膨れた子宮を刺すと液体が出てきたので)
 そんな事は今更どうでもいいです。
 
 獣医学科では4年生になると研究室を決めます。
 様々な研究室がありましたが、
 「がんの新しい研究ができる」という事に感銘をし
 薬理学研究室で抗がん剤の研究をすることになりました。
 それが私ががんに関して知識を深めようと思ったきっかけになります。
 
 がんの闘病は長きにわたります。
 そして人やペットをどんどん弱らせ、精神も削ってゆきます。
 残念ながら現時点では早期発見以外にがんを完治する方法はありません。
 症状があらわれた時点ではがんはすでに進行し、
 完治を目指せない事がほとんどです。
 ですから正しい治療と知識ががん治療には必要になります。
 がんの患者の弱みにつけこんで、
 詐欺な治療をする商売がたくさんみられるのも事実です。
 私は弱みにつけこんだ詐欺、
 そして私も力不足な時もあるかとは思いますが、
 不十分ながんの診断と治療、それらがとても許せません。

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