■ 肥満細胞腫 ■

■ 肥満細胞腫

 肥満細胞腫は、皮膚で最もよく見られる悪性腫瘍と言われ、かわいい名前とは裏腹に危険な腫瘍です。 肥満細胞はいわゆる体型の"肥満"とは関係がなく、炎症などにかかわる炎症細胞のひとつです。 肥満細胞は血液の細胞なので、肥満細胞腫は炎症を起こす部位ならばどこにでも発生します。 主に皮膚にできる皮膚型肥満細胞腫と内蔵型肥満細胞腫に分類できますが、皮膚型よりも内蔵型のほうが遥かに予後は不良です。

■ 検査

 まず腫瘍かどうかの判断を行うために、細胞検査が必要です。 細胞検査で肥満細胞腫が見られた場合はほぼ肥満細胞腫を疑うことになります。 理想の診断方法としては、麻酔をかけて部分的な切除を行い、 組織検査を行うことで、悪性度の診断が推測しやすくなります。 もちろん、一般状態や転移のチェックを行うために癌治療に関するスクリーニング検査は行います。
 肥満細胞腫は炎症細胞であり、この下の写真のように炎症を起こす事や。出血を起こす事が特徴です。 細胞検査を行うことで刺激になり、出血が止まらなくなったり赤く腫れたりすることもあります。 ちいさなしこりであっても、出血を起こしたり赤みのあるものを見つけたら速やかに細胞検査をすることをお勧めします。
 

■ 治療

 皮膚の肥満細胞腫の治療は基本的には外科的切除を行います。現時点の獣医学では、完治を目指せるものは外科的切除のみになります。 腫瘍の悪性度にもよりますが、悪性度が高い場合は腫瘍の端から3㎝程度離して切除をすることが完全切除のために必要と言われています。 但し、進行しすぎた場合や悪性度が非常に高い場合は3㎝余裕をもって切除したとしても完全切除に至らないこともあります。
 一方皮膚以外の肥満細胞腫の場合初期に発見できることが少なく、また初期に発見したとしても悪性度が非常に高くて完全切除が望めない可能性が高いといわれています。 実際当院で皮膚以外に発生した肥満細胞腫のほとんどは外科的に切除して完治に至りませんでした(緩和的外科手術にはなります)。 そこで必要になるのが化学療法(抗がん剤などによる治療)です。 一部の肥満細胞腫では、遺伝子検査の結果により、抗がん剤に比べて体の負担が遥かに少ない飲み薬タイプの「分子標的薬」という分類の抗腫瘍薬による治療も可能です。 いずれ化学療法では薬が効かなくなり、腫瘍の制御ができなくなります。その頃には外科的切除も不可能な状況になっていることが多く何もできないことがほとんどです。
 局所的な制御であれば放射線治療も可能ですが、基本的には長期間の維持は難しいことがほとんどです。費用が最も高額になり、施設のある頻回の通院・麻酔が必要になります。 早期発見が非常に重要です。
 

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